【龍神とは】意味/伝説/信仰/種類/龍神を祀る神社を解説(画像有)
こんにちは、管理人の凛です。
今回は、龍神についてお話したいと思います。日本では、八百万の神と言われるように様々な信仰が存在していますが、龍神もその中の一つです。その土地を守ってくれる存在として言い伝えられ、長きに渡りそれぞれの土地で祀られてきました。今回は、その意味や様々な龍神の種類等についてご紹介していきます。お住まいの地域によっては当てはまるお話もあると思いますので、是非最後まで読んで土地の所以について踏み込んでみて下さい。
龍神とは?意味や伝説・信仰を解説
龍は伝説の生き物ではありますが、そんな存在が古くから土地を守ってきたというお話を、もしかしたら親御さんや祖父母の方から聞いた事がある人もいるかもしれません。まずは、龍神の意味や、伝わってきた伝説や信仰について解説していきます。
龍神は「眷属」とされる場合が多い
稀に、龍のような見た目の雲が見られる事があります。これを龍雲と言います。龍雲は、龍神からのご利益を受けられるものだとされており、写真に撮って身近な所に飾ったり、病床の人に向けて回復を願って送ったりされてきました。龍のような形状の雲の写真を身近に置いておく事で、龍神からの力を授けてもらえると考えられています。夢の中に龍が現れ、病気が完治したという体験談は実際にいくつもあります。
龍神から力を授けてもらえるかどうか、それは龍神の好み次第だとされています。龍神は明確に意思を持っている為、力を授けられるのは、龍に好かれた人だけです。龍神は、目をつけた人に対してサインを送ります。突風や突然の雨等、龍雲もそのサインの一つといわれています。
龍神は、神だとされている一部を除いて、多くは眷属だとされています。眷属とは神の使い、神からの意思を人に伝える橋渡しのような役割を持った存在です。日本では他にも蛇や犬、狐、猿等も眷属だと信じられています。しかし、自身の名前に「神」が入っている眷属は龍神だけです。
龍神の伝説や信仰
龍神は日本発祥のものではありません。紀元前10〜3世紀、日本における弥生時代の後半に、当時の古代中国から龍の存在について伝えられたとされています。古代中国から龍の伝説が伝えられるまでは、蛇を神として崇める文化が存在していました。蛇は脱皮を繰り返す為、不老不死や再生を司る存在として、古代の日本で大切に信仰されてきたという歴史があります。
蛇がネズミを食べる事から、古代の日本では農作物をネズミから守ってくれる豊穣の神として崇められていました。一方で、古代中国から伝えられた龍は、水の神だと考えられ大切にされていました。水は農作物を育てる為に欠かせません。その為、日本に龍の伝説が古代中国から伝えられた時、その存在は蛇と似通ったものだと受け入れられました。また、龍と同じに蛇も水を司る存在なのだという蛇神信仰も存在していたといいます。
3種類の龍神の特徴
龍神は水神や海神だとされ、古代中国から伝えられてから日本各地で信じられてきました。そんな龍神には様々な種類があります。今回は、中でも名高い龍神を紹介していきます。
絶大な力を持ち「神」とされる九頭龍大神
龍神の多くは眷属だとされていますが、九頭龍大神は他の龍神と異なり、神そのものです。その力は絶大であり、物事を現実にしてしまうとされています。九頭龍大神は、神奈川県足柄下郡箱根町にある芦ノ湖に住んでおり、嵐を呼んで人に災いをもたらす毒龍として恐れられていたといわれています。
人々が苦しめられていた中、どうにかして九頭龍大神を鎮めなければならないとして立ち上がったのが、万巻上人です。万巻上人は、奈良時代に存在したとされる僧で、箱根山で修行して箱根三所権現を感得したといわれています。
人々を苦しめる九頭龍大神に対し、万巻上人は自身が身につけたとされる法力を用いて立ち向かいました。こうして万巻上人は暴れ回る九頭龍大神を調伏し、九頭龍大神は神となって人々にご利益をもたらしてくれるようになったといいます。
仏教と共に入ってきたという八大龍王
仏教は、西暦538年に中国から日本に伝わったとされています。八大龍王はこの仏教と共に入ってきたとされ、それまでに日本で信じられていた龍や蛇の伝説と習合する等して信仰される事となりました。八大龍王は法華経にその存在が記載されています。他の龍神と違わず、八大龍王も水神とされ、雨を降らせて飢餓から人々を救ったといわれています。
八大龍王はお釈迦様の眷属です。お釈迦様が生まれた時に、生誕を祝福する為に甘露を降らせたといわれています。やがて、お釈迦様は悟りを開いて迷いを抱える人々に向けて説法を行うようになりました。お釈迦様が法華経を説いたとされる霊鷲山(りょうじゅせん)にて、八大龍王も他の人々や神々と共に説法を聞いたといいます。
このように八大龍王は仏教と大変関わりのある存在であり、他にもお釈迦様を助ける為に洪水を鎮めたとされています。地下の世界に何億もの龍が存在するというのが、仏教の世界です。八大龍王は、その何億もの龍達を束ねる族長なのです。
干ばつから人々を救った印旛沼の龍
千葉県北部、利根川の下流南岸にある印旛沼(いんばぬま)には、龍神伝説があります。その龍神は、干ばつによって農作物が枯れ果ててしまい苦しんでいた農民の願いを聞いて大雨を降らし救ったとされています。しかし、その代償は大きく、龍神は自分の命を使い果たしてしまいました。
龍神が自らの命を落としてしまう程、印旛沼の周辺に住む人々を襲った干ばつは深刻だったといえます。中には、あまりにも農作物が育たなかった為に餓死を覚悟した者もいました。印旛沼の主としてこの土地を守ってきた龍神は、人々を救う為に雨を降らせる事を決意したのです。
しかし、雨を降らせる為には、自らよりも上位に位置している龍神らに許しを得なければなりません。ですが、印旛沼の龍神は、上位の龍神らに許しを得る事なく、雨を降らせてしまいました。その結果、人々は飢餓から救われたものの、印旛沼の龍神は上位の龍神らを怒らせてしまい、体を3つに裂かれて殺されてしまったといいます。
バラバラになってしまった印旛沼の龍神の体は、印旛沼の周辺に散ってしまいます。人々は、命を投げ打ってでも自分達を助けてくれた印旛沼の龍神を祀る為に、3つの寺を作りました。これが、龍角寺、龍腹寺、龍尾寺です。人々を救った印旛沼の龍神伝説は、3つの寺でバラバラになってしまった龍神を祀りながら今でも伝えられています。
龍神を祀る4ヵ所の神社
日本では、龍神を祀る為に、数々の神社にてその存在を古くから語り継いできました。日本各地に、龍神に関する様々な伝承があります。以下では、龍神を祀っている4ヵ所の神社についてご紹介していきます。
九頭龍大神が祀られる箱根神社
箱根神社は、万巻上人が調伏して善神へと変えたとされる九頭龍大神が祀られています。九頭龍大神は、縁結びや金運守護、商売繁盛をもたらしてくれる存在です。龍神は水にまつわる存在だとされていますが、箱根神社には「龍神水」があります。龍神水は、九頭龍大神が住む場所から湧き出している水といわれる霊水です。
空海も修行をしたとされる龍穴神社
奈良県宇陀市にある龍穴神社でも、龍神伝説が語り継がれています。奈良県宇陀市には龍神が住んでいるとされた龍穴があり、古くより水神を祀る場所としてあるのが龍穴神社です。真言宗の開祖である空海は、この龍穴神社で修行したとされています。空海は龍を使いこなせる能力を持っていたとされており、周辺の地域では様々な龍神伝説が残っています。
龍穴神社には、九穴八海という龍神伝説があります。龍穴神社では、九穴八海に関する説明が書かれた看板が立っている為、参拝前に確認して理解を深めましょう。
九頭龍大神の伝説が伝わる長野の戸隠神社
長野県長野市北西部にある戸隠山に、龍神伝説が伝えられている神社があります。それが、戸隠(とがくし)神社です。戸隠神社は、日本神話における天照大神が塞ぎ込んでしまった天岩戸事件にも関連しています。ここにも九頭龍大神の伝説が伝えられています。箱根神社に伝えられているものに似た話ですが、戸隠神社における九頭龍大神も、かつては悪しき存在でしたが、修行して力をつけた者によって善神となりました。
かつて日本では、神と仏の違いが明確にされてこなかった事もあり、戸隠神社は戸隠寺、顕光寺という名前で有名な修行場でした。明治時代に入ると、この違いを明確にするべく神仏分離令が発令されます。こうして現在の戸隠神社になりました。昨今では話題に上がりがちな龍神の御朱印集めですが、九頭龍大神を祀っている奥の宮は、山の奥で危険な事から冬場の登山は禁じられています。
本宮には龍神の加護を受けたご神水が湧き出す貴船神社
京都府京都市左京区にある貴船神社には、京都で最も力を秘めているとされる龍神が祀られています。縁結びを始めとした強力なご利益が期待出来、その強大な力は強すぎるあまり呪いに関する話だけが独り歩きしてしまう程です。雨乞い等、水神である龍神を祀っているが故に行われてきた儀式もあります。貴船神社では参拝方法として三社詣を基本としており、本宮、奥宮、結社の順に伺います。
貴船神社の貴船は「きふね」と読みますが、地名の場合は「きぶね」です。濁音を取り除く事で、水が濁ってしまわないようにと考えられています。このような験担ぎは貴船神社だけでなく、古くから日本に存在しています。
貴船神社では、磐長姫という神と、闇龗神と高龗神という2柱の龍神が祀られています。闇龗神と高龗神は、日本神話において国造りを行った伊邪那岐尊の子です。
龍神が住むとされる貴船神社の龍穴は、強力な大地のエネルギーが噴き出す神聖な場所です。その為、直接目で見る事は禁じられています。
貴船神社の本宮には、龍神の息がかかってとされている有難いご神水が湧き出しています。龍神の加護を受けたこの水は、湧き出してから一度も枯れた事がありません。水は汚れを落としてくれる神聖なものです。中でも龍神の息がかかった水は、より神聖なものだと言えるでしょう。訪れた際には必ずチェックする事をオススメします。
まとめ
中国から龍神の存在が伝えられるまで、日本では蛇が神の眷属だとして祀られてきました。やがて龍神の話が伝わり蛇神伝説と習合等して大切に扱われるようになり、日本人の文化にとって龍神伝説は切っても切り離せないものになったといえます。
龍神は世界共通のものというよりも、それぞれの土地で人々を守ってくれる守護神のような存在です。自分が生まれ育った土地の由来を調べてみれば、自然と龍神伝説と巡り合う事もあるかもしれません。今回ご紹介した龍神や神社以外にも、小さい祠によって大事に祀られている場合もあります。
龍神は水神として汚れを落としてくれるだけでなく、縁結び等様々なご利益ももたらしてくれます。是非、神社や龍穴に訪れて、その力の一端に触れてみて下さい。